小宮山の席の周りを、西野と佐々木、それから驚愕の表情を浮かべたマナが取り囲む。

「すみれ、さっきのあれ、ホント!?」
「うん、ホント」

「「「!!!」」」

恥ずかしそうに頬を染める小宮山に「どーしてなんにも言ってくれなかったの!?」と、西野と佐々木が詰め寄る。
もちろんマナだって黙ってはいない。
「そーだよ、聞いてない!! 昨日はつきあわないって言ったよね!? それが何でこんなことになってんの!!」
「そそそ、それはね、うーんんん・・」

しどろもどろと歯切れの小宮山に女3人が食ってかかる。
オレはそんな彼女らの様子をマナの背後からコッソリと覗き見ていた。

悪気があったわけじゃない。
言えなかっただけで。

小宮山を庇ってやりたくて、オレはマナを押しのけ、女子の輪に割って入った。

「今更そんなことどーでもいいだろ? 小宮山のことあんま責めんなよ」
「「「・・・・は?」」」

しかし、ぐるりとオレのほうへ顔を向けてきた女子3人の反応は薄かった。皆、値踏みでもするかのような目つきでオレを見る。
決めかねているのだ。オレの扱いをどーするか。
オレはまだ、小宮山の特別なオトコとして女共にキチンと認められていないのだ。

言わせてもらえば、これに関しては小宮山が悪い。

オレは小宮山への気持ちを隠したことなんてなかったが、小宮山はオレとは真逆の態度を頑なに貫いていた。オレのことを周囲にイジられる度、完璧なポーカーフェイスで「友達だよ」と繰り返していた彼女。
おかげでオレは『ちっとも相手にされないくせに小宮山に絡みまくるシツコイ男』として女子ウケがイマイチなのだ。
今までずーっとそんな扱いだったから、いきなりいいほうへは切り替えてもらえない。

ーーー信じられない。
ーーーまさか、加瀬くんと。
ーーー一時的な気のマヨイじゃないの。

概ね女子の反応はオレに失礼だったけれど、そんなことはもうどーだっていい。
だってーーー

「ねえ、ほんッとーに加瀬くんのことが好きなの??」
「ウン。スッゴイすき・・」

「「「!!!」」」

これだ。

オレは女子たちに背を向けて、ふふふ・・と笑みを漏らした。
ムダにがんばらなくてもよくなった小宮山は昨日から気持ちを隠さなくなった。
オレは今、恐ろしく気分がイイ。