「ねえねえ加瀬くん、数プリ見せて?」
「いーよ」
差し出されたプリントは相変わらずの完成度。
こう見えて加瀬くんは頭がイイ。しかもバリバリの理系男子だ。
「スッゴ・・なんでこんなにわかんの??」
「むしろ小宮山はなんでわからないの?」

加瀬くんのプリントに頼りながら放置していた何問かをうめていた時のことだった。
「なあ、ゆうべハルキからLINEあった?」
顔をあげると、なんだか表情の読めないマジメな顔をした加瀬くんがじっと私を見ていた。
「えっと・・」

やましいことなんかいっこもない。
けれど、加瀬くんとの昨日のやり取りを思い出して、なんとなく返事が遅れてしまう。

「なあ、あった?」
「・・ウン、あった」
「やっぱりね」
って言って加瀬くんが上から2問目の式を勝手に消しはじめる。
「でもお礼が書いてあっただけだよ?」

「ふーん」て言ったまま、加瀬くんがむっつりと黙り込む。
つまんでた消しゴムをポイと放った彼は、そのまま頬杖をついて顔を隠してしまった。

「え・・加瀬くん・・?」

突如流れ始めた不穏な空気。不安で胸がザワついた。
これって絶対、本屋でのアレのせい・・!