「ゴメンね、たこ焼き冷えちゃった。これ食べたら帰ろう?」

トレーを抱え直して、私はしんなりと冷たくなったたこ焼きに箸を入れた。
でも、加瀬くんは動かない。

「なあ、小宮山はいつになったら恋ができるようになんの?」
加瀬くんがじっと私をみつめる。
「・・そんなのわかんないよ」
「したくないってわけじゃないんだろ?」
「そりゃいつかはしてみたいなって思うけど・・やっぱ怖い」
「ハイハイ、怖いのね」

ニヤニヤと顔をユルませた加瀬くんが何やら得意げに頷いた。そして叫ぶ。

「オレ、わかっちゃった!!」

ポカーンてする私に加瀬くんがキラッキラした笑顔をむけてくる。
なんだかわかんないけど、とにかく何かイイコトを思いついたらしい。
エラそうに腕を組んで「わはは」ってのけぞる彼に、ドキドキと胸が鳴った。

「なっ、なに!? どーしたの!??」
「あーすげえ。ゼンブわかった。さすがオレ!!」

「???」

こんなふうだから私は加瀬くんから目が離せない。
加瀬くんはいつだって、私の知らない道を歩いている。