すっごい好きだから。
好きが大きいぶんだけ、余計に怖い。

私は普通の愛情ってもんをよく知らない。家族の中にあったのは、愛情のように見せかけた、いびつで歪んだ絆だけ。
さっきの春樹くんを見て久々に背筋が凍る思いだった。昔の自分が蘇って。

私も春樹くんも、世間の『普通』からズレたところで育ってる。
さっき加瀬くんには立ち直ったって言ったけれど、今の私が本当に大丈夫な保証なんてどこにもない。
もしも私の立ち直り方が半端なものだったとしたら、どんなに上手に『普通』を取り繕ってもたぶんダメ。近づきすぎれば必ずアラが見えてくるだろうし、きっとどこかでボロが出る。

私たちのような問題を抱える者たちは、往々にして最も身近な人間を利用し、傷つける。

父が私を痛めつけるように。
母が私を裏切り利用するように。
そんなふうに私自身が(・・・・)加瀬くんを傷つけるようなことにでもなりでもしたら、私は今度こそ本当に立ち直れないかもしれない。

そう思うと心がすくんだ。