小宮山が言うには、ふたりは同中。ただし面識はない。
だけど、小宮山のほうはハルキを知っていた。なんでかっていったらハルキのオヤジがアル中で有名だったから。

「それが原因でアイツ、非行に走っちゃったの?」
「んーん、逆。春樹くんはすっごい普通(・・)。万引きなんかするようなタイプじゃなかったんだけど・・」

なのに、そんなハルキが今はなぜか枯れ果てて、非行寸前まで堕ちている。

「久しぶりに会ったら変わっちゃっててびっくりした」
「ふうん」
「さっきのあれもヤケクソだよ。ホントはあんなことするような人じゃないんだもん。だから心配になっちゃって」
それでつい・・と言葉を濁しつつ目を泳がせる。

そんな彼女の様子を観察しつつ、オレはひとり静かに鼻息を荒くしていた。

いーーや、違うッ。
アレは「つい」なんて軽いノリですまされるよーなもんじゃねえッ。

さっきも今も。小宮山から感じるのはなぜだか、只事じゃないほどの『後ろめたさ』だった。
けれど、そんなのはおかしいのだ。ハルキの万引きの責任はハルキ本人にしかない。小宮山にはなーんも関係ない。
それなのに、なんだって彼女がこれほど憔悴しているのか。
まるでアイツの罪を一緒になって背負ってやってるみたい。

危うげで、不可解で・・特別なふたり。

オレの目には、ふたりのことがそんなふうに映った。

だがしかし。そんなことを許すオレではない。

彼女はオレのもの(になるハズ)なのだ。
取り返さなきゃ、とオレは焦った。
グラグラと不安定になっている小宮山の肩を掴んで、オレはちょっと大げさに彼女の身体を揺り動かしてみる。

「小宮山コッチ見て」
彼女がハッと顔を上げる。
「よそ見すんな。別の男のことばっか考えないでよ」

慌てた小宮山がブンブン首を横にふって弁明をはじめる。

「ちっ、ちがうちがう。全然そーゆうんじゃない!」
「ドコが違うんだよ。アイツだけ明らかに特別扱いじゃねーかよ。なんでだよ」
「そんなのしてない!! 誤解だよ!!」
目を丸くした小宮山が必死で首をふり続けるのだが、オレは納得しなかった。だってーーー

「らしくなかった」

「え??」
「だってオマエらしくないだろ? あーゆうの!!」