小宮山が指差すほうを見てみると、うちの制服を着た男子生徒がこっちに背中を向けて立っている。
肩にひっかけてるサブバッグの内側の持ち手だけが不自然にずらされているのと、そいつの醸し出すただならぬ雰囲気とで、たぶん万引きだなって思った。
でも、おそらくコイツは慣れてない。
迷いと罪悪感とが背中から滲み出てる。

隣で息をつめてる小宮山に、
「どうする? 店員呼ぶ?」
って言ったら、小宮山は断固として首を横にふった。
「それはダメ!」

オレはそんな小宮山の様子にちょっと驚いたのだ。

「オマエ、あいつのこと知ってんの?」
「え? ああ、顔が見えないとわかんないか・・あれ、春樹くんだよ」
「ウソだろ、あれハルキ!?」
「ウン」
オレのほうなんか見もしないで、ハルキだけを凝視しながら小宮山が頷く。

「あ」

突然小宮山が小さく息をのみ、オレは急いでハルキに視線を戻した。
「ーーーよかった、やんなかった・・」
どうやら未遂。小宮山がホッと息をつく。

けれどハルキは動かない。
平積みの本を凝視したまま微動だにしないのだ。
「あれ、またやるぞ」
「だね。どうしよう・・」
心配そうな顔をしてハルキをみつめる小宮山の顔が更に曇った。