オレがそう言うと、小宮山は赤い顔をしたまま眉間にシワをよせた。

「そ、それはもうチョットまって。も少し考えるから」
「なにを考えんだよ? それ必要?」
「必要」

オレにはよくわからない。小宮山が何を迷っているのか。
風鈴の前を離れて歩き出す小宮山の横にならぶ。
「なんで今すぐOKじゃダメなの?」
「だ、だからさ、それは心の準備がきちんと終わってから・・」
「心の準備ってなんだよ?? わっかんねえなあ」
全然噛み合わないやりとりの最中、突然ピタッと立ち止まった小宮山が、一歩、二歩と足を後ろへ戻す。
首だけ傾けてひとつ前の書棚の奥を覗いた彼女は、あわあわと身体の向きを変え本格的に覗き見の体制を整えた。

「なんだよ、どうかした?」
「いや、えっと・・あれ、様子おかしくない?」