放課後、今日もオレらは百日紅の樹の下にいた。
今からここで、オレは小宮山にフラれる。

「いーよ、やってよ。フるならフって」

オレがそう言うと、困りきった顔した小宮山が小さな声でつぶやいた。
「加瀬くんの彼女にはなれない、ゴメン」って。

「わかった」

想定通りだから、まずは大人しくフラれとく。

「でも好きだ」

諦める気なんてない。
何回フラれたって構わない。小宮山にウンて言ってもらえるまで、オレは何度でも好きだって言って粘りまくるつもり。
だけど攻め方がわかんないから、まずは小宮山の様子を探ってみることにする。

「なあ、なんで急にこんなこと言い出したんだよ。やっぱハルキが関係してんの?」
「違うよ。春樹くんはホントに関係ない」
「じゃあ、なんで?」
小宮山がすっごいバツの悪そうな顔をしてうつむいた。
「だって、私のせいで加瀬くんアタマ大丈夫かって・・」

ああ、アレね。まあね。
ヤバイやつだって思われてるかもね。

「オレのこと、心配してくれてんの?」
「当たり前じゃん。耐えられないよ」
って言って小宮山はやるせなさそうにぎゅっと唇を噛んだ。

春樹が原因じゃないのなら。
オレのこと大事に思ってくれてるってゆーのなら。それなら、なおのことーーー

「オレとつきあってくれればいーじゃねえか」

そうなのだ。
小宮山がひと言『ウン』て言ってくれさえすれば全てがまーるく収まる。
なのに小宮山ときたらやっぱり「そんなのムリだよ、つきあえない。友達でないと・・」とか言ってウジウジと下を向くのだ。

オレにはこれがわからない。
なんで友達でなきゃダメなのか。