グズグズしてるうちに、加瀬くんに先にしゃべられちゃう。
ぎゅうぎゅうと私を抱きしめながら、加瀬くんが私の耳元でゆっくりと口をひらいた。

「これじゃあ、オレのことが好きみたいだネ?」
「もちろんスキです。加瀬くんはとても良いオトモダチなので」
「・・・」

シラを切ってはみた。・・が。
動悸、息切れ、極度の赤面。ゴマカシは通用しない。

「そーいうの、もうヤメロ。なんで気持ち隠そーとすんの? オレのこと好きだよね?」
「・・・」
「ダンマリかよ!! なんで!?」
加瀬くんの手のひらが再び私の頬へと戻ってきた。その大きな手にとっても大事につつまれる。
「なあ、もう好きって言っていい?」
「ダ、ダメ! それ言ってもらっても私つきあえないから」

加瀬くんが首をひねる。
「なんで? オレら両想いだよね?」
「・・んーん、友達」
もっかい、ひねる。
「オレら、友達なの?」
「うん、友達・・」

困惑した表情を浮かべたまま、加瀬くんがそーっと身体をはなした。
「よくわかんねえけど、わかった」って言って。

ふたりの間にぬるーい風が吹き抜ける。

きっと加瀬くんはこのまま私から離れてゆくのだろう。
そしたらもう、私たちの距離が縮まることは二度とない。

鼻の奥がつーんと痛い。

こんなに悲しいのに。
こんなにツライのに。

それでも私はどうしても、彼への一歩を踏み出すことができない。

怖いのだ。

加瀬くんのことが好きだから。
好きなぶんだけ余計に怖い。

私はどうしても加瀬くんに『ウン』が言えない。