「あーやりにくい! なんでそんなゴソゴソ顔動かすの? じっとしててよ」
「だってくすぐったいの!」

これでもオレは結構我慢してるつもり。
なのに小宮山はムッスーって不満げな顔でオレを睨むのだ。
「はーあ」ってため息つきつつオレの顔を眺めていた小宮山が「そうだ。顔、おさえてみよっと」って言いだした。コットンを左手に持ち替え、右手をぴたっとオレの頬に添える。
そのヤワラカな感触に搔き乱されて、オレはあっという間に平常心を保てなくなった。

「わわわ、ヤメロよ。こんなんもっとダメ!!」
「だって動かれるとやりにくいんだもん。しょーがないよね」

男子の顔なんか触れないとか言って騒ぎまくってたくせに、そんなのすっかり忘れてオレの顔を鷲掴みしちゃう小宮山には、やっぱりデリカシーが足りてないと思う。
無遠慮に触られて、ぞぞぞと鳥肌が立った。

ヤメテ、ホントに。
ヘンな声出そう・・!

「マジで勘弁して! それイヤだ!」
「やれって言い出したの加瀬くんじゃん。ちょっとは我慢してよ」
「そーだけど! そーなんだけど・・・・!」

「ーーーあのさあ。我慢するかやめるか、どっちかにしてくれる?」

迷惑そうに顔を顰めた小宮山が、オレにとっては悩ましい二択をつきつける。

「どっちもヤだ」
「あのねえ・・」

好きな女の子に、顔、ポンポンってしてもらいたい。なのにそれが我慢できないくらいくすぐったい。そーゆうオレのジレンマが、小宮山にはなにひとつわからないらしい。
悔しくてつい手が伸びた。小宮山の手つきを真似てほっぺにするすると手のひらを滑らせる。

「どーよコレ。くすぐったいだろ!? オレだってすんっげええ我慢してんだよ。わかる?」

「・・・」
「・・・」

だけど、そうしてみてからシマッタって思った。
だってこのままキスできちゃいそう・・オレ、小宮山の頬をすっぽり手に包んで、至近距離から目の奥のぞきこんじゃってる。

そしたらーーー