そして、その日の午後。
行儀悪く私の机に頬杖ついてた加瀬くんが「これ、小宮山が責任持って落としてよ」って言い出した。

「帰りに公園でやって」
じいっと私の目を見て淀みなく要求を口にする加瀬くん。
「ムリだよ。クレンジングもコットンも、なーんもないもん」
「そんなもんはコンビニで買えばいーんだよ」
「えーー・・」

「家でやりなよ。お風呂の時とかにさ?」
って言う私に、加瀬くんがニッコリと微笑んだ。
「オレが誘ったらオマエどーすんだっけ?」
「え」
「ねえ、どーすんだった?」
「・・・」

例の約束をチラつかせて手早く話をまとめると、加瀬くんは頬杖を解いて私の方へ真っすぐに向き直り、嬉しそうに身体をよせてきた。

「じゃ、お詫びにアイスもおごって。一緒に食お?」
下からのぞきこむようにしてシッカリ視線を絡ませて、おでこがくっつきそうな距離に留まったままちっとも離れてくれない。
「ん。それもわかった。・・ってか、近いよ、加瀬くん」
「近くしてんだよ」