☆☆☆

「どうして私に連絡せずにそんな無謀な事をしたの」


仏頂面の真奈ちゃんがガーゼを僕の頬に押し当てる。


染みついた消毒液が痛くて「いててっ」と顔をしかめると睨まれてしまった。


「一歩も歩けなくなるくらいにボコボコにされているんだから、痛いに決まってるでしょう」


ボロボロになった人間を前にしても真奈ちゃんの態度は変わらない。


僕が余命宣告を告白した時にはさすがに目を丸くしていたけれど、それ以外で真奈ちゃんが大きく表情を変えたのを見たことがなかった。


ずーっと同じ、安定した仏頂面か無表情。


それが、今の僕には嬉しかった。


「呼びだしてごめん」


謝ると、真奈ちゃんは一瞬動きを止めた。


そしてまた消毒液がたっぷり染み込んだガーゼを僕の頬に押し当てる。


「いてててててっ!」


さっきよりも数倍痛い。


わざと力を込められたみたいだ。