今回も同じだ。


僕は1度でも純平を殴ることができた。


それが一番大切なことだった。


「もういい、やめろ」


純平の声が聞こえてきて隆夫の手が止まった。


そっと両腕のガードを外してみると2人が僕のことを見下ろしていた。


純平はなにか言うだろうか。


そう思ったが、なにも言うことなく僕を置いて帰って行く。


2人の姿が見えなくなると途端に体中が痛んだ。


あちこちぶつかって、殴られて蹴られて、思った以上に負傷しているみたいだ。


赤ん坊がハイハイするように校舎の壁にすりよって、それを背もたれにして座り込む。


少し呼吸が落ち着くのを待ってから、ポケットから財布を取り出して中身を確認した。


ちゃんと、お小遣いの全財産が入っている。