犬の種類はダックスだ。


隣のビルから出て来たスーツの男性は商談が上手く行ったのか上機嫌そうだ。


向こうの公園ではハトにエサをやっているおじいさん。


それは本当に不思議な時間だった。


あっという間に落下しているはずなのに、まるで永遠のように長く感じられる時間。


そこから見える景色はどれも美しくて、僕の心を穏やかにしてくれる。


見慣れているはずの景色がこんなにきれいだったなんて、死ぬ前に気が付く事が出来てよかった。


そう思った時だった。


不意に異物が僕の視界に入って来た。


そこにあってはならないもの。


そこにあるべきではないものが見えて目を見開く。


同時にソレも目を見開いた。


アーモンド形の綺麗な目が見開かれ、中の茶色がかった瞳が揺れている。


そしてソレは僕の落下する進路上に存在していた。