母親にそう言われて僕は『えっ』と言ったきり固まってしまった。


家を出るにはまだ早い。


なにより僕は友達に来てもらう約束なんてしていなかった。


嫌な予感が胸をかすめる。


『友達って誰? そんな約束してないけど』


早口で言うと、母親は首をかしげて『そうなの? だけど来たのは純平くんと隆夫くんよ?』と答える。


やっぱり、2人だ……。


その名前を聞いただけで血の気が引いていく。


母親はサッカー部だった2人のことを知っているので、なんの疑問も感じていないようだ。


『あの、僕まだ出るには時間がかかるし、先に行ってもらってくれないかな?』


『でもせっかく来てくれたのに』


母親は2人に申し訳ないと思っているようで、困り顔になってしまった。


僕は一刻も早く2人に帰ってもらいたくて言い訳を考える。


だけどその時間を与えないように階段を上がって来る足音が2つ聞こえて来たのだ。