思えばこれだけのことだってしてこなかった。


こうして隣に立てば母親が今なにをしているのか理解することができたのに、隣に立つ事もなかった。


やっぱり、それに対しては悔やまれる気持ちが生まれて来る。


だけど昨日の出来事があってから心の中はどこかスッキリとしていた。


話し合いはよくない結果に終わってしまったかもしれないけれど、いつまでもモヤモヤとした気分のまま過ごすよりはずっといい。


「こうして息子と2人でキッチンに立つなんて不思議な気分ね」


母親は昨日あまり眠れていないのか、充血した目で笑った。


「そう?」


「そうよ。お母さん、ずっとこうしておしゃべりしながら料理をしてみたかったの」


母親の言葉が胸にチクリと刺さった。