フェンスの内側から下を除いてみると想像以上に高いことがわかった。


5階くらいだと思っていたけれど、もっと階数があったのかもしれない。


1度大きく息を吸い込んで、吐き出した勢いでフェンスを乗り超えた。


フェンスの外側は人が1人立つのも厳しいくらいのスペースしかない。


僕は後ろ手にフェンスを握りしめてつま先だけでそこに立った。


下を行きかう人々が僕の存在なんて気が付いていないようで、早足に通り過ぎていく。


誰も上を見ようとしない。


ただ自分の目的のために、自分の道を歩いて行く人々。


それは今の僕にとって好都合だった。


誰かにバレて通報でもされたら迷惑をかけてしまう。


そこまで考えて少しだけ笑ってしまった。


これから飛び降り自殺をしようとしている人間が他人への迷惑を考えるなんて、おかしなことだ。


後処理とか、そういうことを考えたら迷惑に決まっているのに。


とにかく誰も巻き込まないようにしようと、人の行き来がなくなるまで待つ。


5分ほどそこに立っていても恐怖心は湧いてこなかった。