もくもくと1人で掃除をしていると、途中から母親が掃除機を持って来て細かな破片を吸い取ってくれた。


「さっきの子は彼女か」


母親が掃除機を切ったタイミングで父親にそう質問され、僕は思わず顔が熱くなるのを感じた。


こんなときになんて質問を!


でも、一般的に見れば彼女だと思われてもおかしくはない。


彼氏のことが心配で見に来た、優しい彼女。


「違うよ。ただの友達」


なんだか言い訳がましい言い方になってしまったけれど、父親はひとまずそれで納得してくれたみたいだ。


それから3人で会話もなくリビングの掃除をすることになった。


時刻はすでに昼前になっていて、母親の約束時間もとっくに過ぎてしまっているようだ。


母親は一旦寝室へ戻って動きやすいジーンズに着替えてくると、手際よく掃除をし始めた。


僕や父親なんかよりもずっと素早く、無駄のない動き。


それを見ているとなんだか胸の奥が痛くなった。


僕も父親も、どれだけのことを母親1人に任せて来たんだろう。


僕たちができないことを、どれだけ母親が補って来てくれたんだろう。