「修羅場になれている人間なんてきっとろくなもんじゃないでしょ。慣れてないのが普通」


真奈ちゃんは冷たい声でそう言うと、さっさと玄関から出て行ってしまった。


あぁ、帰ってしまった。


頼みの綱だった真奈ちゃんが無情にも帰ってしまい、僕はひとりでリビングに戻るしかなくなってしまった。


このまま自分の部屋に逃げ込んでもいいのだけれど、そういうわけにもいかない。


そっとリビングのドアを開けるとさっきと同じ状態で両親が立っていた。


2人とも無言で視線を逸らし、また重たい空気が立ち込め始めている。


僕は呼吸ができなくなってしまいそうな不安を感じて、大きく息を吸い込んだ。


そしてわざと大股でリビングに入る。


我が家ではきっとこれからしたくもない話し合いをすることになるだろう。


そのためにもまずは掃除をしなくちゃいけない。


スリッパをはいて足の裏を切らないように気をつけながら、花瓶を破片を回収していく。