真奈ちゃんはそう言って目を見開き、動きを止める。


「家で居場所がないって言っただろう? その原因は母親の不倫にあるんだ。たぶん父親も気が付いてて、家の中は冷え切ってるんだ」


もう高校2年生だから両親が恋しくて仕方ないといったことはなくなった。


だけど帰るべき場所が冷凍庫のように冷たいとなると、さすがに胸が苦しくなってくる。


できれば暖かな場所に帰りたいと願う。


「そっか。こっちも問題そうだね」


真奈ちゃんはまた顎に手を当てて呟く。


「母親の問題だから僕には関係ないけどね」


強がって言ってみるけれど真奈ちゃんの心配そうな目に見つめられると黙り込んでしまった。


僕の家族は3人とても仲が良くて、キャンプやスキーには毎年のように行っていた。


近所でもおしどり夫婦と評判の両親は2人だけでデートに行くときだってあった。


それが、僕が高校受験の頃あたりから家の中がギスギスし始めたように感じる。


一人っ子の初めての受験。


僕自身一生懸命に勉強して、その年はキャンプもスキーも行かなかった。


そして見事今の高校に合格できた。