近くにいた女子生徒たちは迷惑そうな顔を僕に向けて、教室から出て行った。


痛みに顔をしかめていると2人は『ダッセー』と笑い声を残して、教室を出て行ったのだった。


僕は自力で立ち上がり、教室の中を見回す。


みんな、僕と視線が合いそうになるとすぐに目を逸らした。


知らん顔をして読書を続けている生徒。


ニヤニヤとねばつくような笑みを向ける生徒。


どちらにしても、僕を助けようとしている生徒は誰もいないということだけは、理解できる光景だった。


僕は殴られた頬を冷やすため、1人でトイレへと向かったのだった。


余計な事を思い出してしまった。


記憶がよみがえると同時に強く下唇を噛みしめる。


悔しさが胸の奥から込み上げて来る。


純平と隆夫の2人がどうして僕をターゲットにしているのかはわからない。


たぶん、話方が嫌だとか、見た目が嫌いだとか、その程度のことだと思う。


たったそれだけの理由で僕の学校生活は最低なものになっていた。


「生きていたっていいことなんてなにもないのか……」


ふと立ち止まり、呟いた。