「そっか……」


真奈ちゃんと一緒にお店を出ることも、見送ることもせずに俯いているとふと隣に人の気配がした。


店員さんかと思って顔を上げると、そこにはついさっき店を出たはずの真奈ちゃんが立っていた。


驚いて思わず立ち上がってしまう。


「ま、真奈ちゃん、まだ何か用事?」


思わず真奈ちゃんと呼んでしまって嫌がられるかと思ったが、真奈ちゃんは相変わらずの仏頂面を続けているだけでその気持ちを判断することはできなかった。


真奈ちゃんは無言で鞄の中からピンク色のスマホを取り出した。


「なにかあったら連絡して」


「え……?」


「また巻き込まれたら嫌だから!」


ダンッ!と足を踏み鳴らして催促する真奈ちゃんに慌てて僕もスマホを取り出した。


心なしか真奈ちゃんの表情が緩んでいる気がする。


「じゃあね。もう会う事もないと思うけど」


真奈ちゃんは乱暴にそう言ってファミレスを出て行ってしまった。


残された僕はスマホに残された真奈ちゃんの番号を見つめて、帰って行った真奈ちゃんの頬が少しだけ赤くなっていたことを思い出していたのだった。