勢いよく立ち上がると、真奈ちゃんの母親が驚いた表情をこちらへ向けた。


「どうしたの?」


「ちょっと、大切な用事を思い出して」


早口で言ってその場を去ろうとした、その時だった。


真奈ちゃんが治療を受けていた診察室のドアが開いた。


「真奈!」


真奈ちゃんの母親が立ち上がり、その人へ駆け寄る。


振り返って確認すると、出て来たのは真奈ちゃん本人だった。


足元が少しふらついているけれど、しっかりと歩いて近づいてくる。


その隣には看護師さんがつきそっている。


「心配かけてごめんね。今日から入院だって」


真奈ちゃんはいつもの調子でそう言った。


その瞬間僕は膝から力が抜けて、崩れ落ちてしまいそうになった。


「でも大丈夫、私まだまだこんなに元気だから」


真奈ちゃんはそう言って細い腕で力こぶを作って見せた。


その視線は僕へ向いている。