「あの子、元気な時は好きな人なんていないって言っていたのに、あなただったのね」


「え……?」


また、頭の中が真っ白になってしまいそうになる。


どうにか思考回路を繋ぎとめておくことで精いっぱいだ。


「真奈は、あなたとその願いを叶えることにしたの。つまり、真奈の好きな人は……」


母親の視線を感じて、こんなときなのに頬が熱くなってしまった。


俯き、真奈ちゃんの手帳を食い入るように見つめた。


「で、でも、違うと思います」。真奈ちゃんは手頃な僕とこの願いを叶えようとしただけだと思います」


恥ずかしさを隠すため早口になっていた。


真奈ちゃんの母親は目を細めて左右に首をふる。


「今日も真奈は、あなたと一緒に食べるんだって言って、嬉しそうにサンイッチを作っていたわ」


僕は真奈ちゃんの持っていたバスケットを思い出す。