母親は家を出ていくことになっているけれど、僕の余命宣告があって以降は部屋の片づけを止めている。


さすがに、こんなときに引っ越しなんてできないと判断したのだろう。


「じゃ入って来るよ」


僕は笑顔で母親に手を振って玄関を出た。


途端に日差しが突き刺さる。


今日も信じられないほどいい天気になりそうだ。


水族館だからきっと大丈夫だと思うけれど。


ぼんやりとそんなことを考えながら、僕は約束場所の駅へと向かったのだった。