「さすがにこの事時間だと見るものがないかな」


観覧車の窓から街を見下ろしてみると、車や人がジオラマみたいに小さく見える。


普段は僕たちもあの豆粒ほどの人間と同じように生活をしているのだと思うと、なんだか妙な気分になった。


「でも、綺麗」


呟く愛奈ちゃんへ視線を向けると、真奈ちゃんは目を細めて町の様子を見つめていた。


ライトアップもなにもされていない園内、豆粒ほどの小さな人間が行きかう光景を愛しいもののように眺める。


僕はついそんな真奈ちゃんのことをみつめてしまいそうになり、慌てて左右に首を振った。


僕の中で恋愛は確かに心残りのひとつかもしれない。


だからといって目の前の少女を意識しているわけじゃない。


僕はきっと真奈ちゃんと出会った最初の頃から、真奈ちゃんのことを意識していた。


こうして密室のゴンドラに揺られている今、嬉しくて仕方ないこと認める。


「真奈ちゃん」


愛奈江を呼ぶと真奈ちゃんが窓からこちらへ視線を向ける。


その瞳があまりに真っ直ぐだったので息が止まりそうになる。