それに似た病状があったし、前から自分で調べていたから、きっとそうなのだと思い込んでいた。


でも結果は違った。


この医師が僕に宣告したのは胃癌。


そしてもって一か月という余命だった。


「高橋くん、大丈夫かい?」


医師の顔が僕の顔を覗き込む。


僕は楽しい事なんてひとつもないのにヘラリと頬の力を緩めて笑っていた。


「はい。無理言ってすいませんでした」


ヘラヘラと笑った顔のままそう伝えて勝手に診察室を出る。


後ろから看護師さんが声をかけてきたけれど、足を止めることができなかった。


待合室を抜けて会計もせずに外へ出る。


外は相変わらず汗がにじむほど熱くて、診察室で寒く感じたのは僕1人だったのだと気が付いた。


そのままフラフラと歩いて広い病院の敷地を出る。


行きかう車。


行きかう自転車、人々。