一応予約も入れて来たのだ。


1度目のときは会計もせずに飛び出してしまったが、今回はかなり冷静になれていたと思う。


「そうか……」


父親はそう言ったきり黙り込んでしまった。


母親はさっきから落ち着かない様子で僕と父親を交互に見つめている。


「で、その時お母さんにも一緒に来てほしいんだ」


僕は助け舟のように話をふった。


母親はおもちゃみたいに何度も首を縦に動かすと「もちろんよ」と掠れた声で答えた。


目には少し充血してきていて、僕の言葉が嘘ではないと信じてくれている様子だ。


話を信じてもらえないことには前へ進めないので、ひとまず安心する。


問題は明日母親病院で卒倒してしまわないかどうかだった。


なんで余命宣告された本人がこんなにまわりのことを気にしているんだろうと考えて、僕はまた少し笑ったのだった。