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夕飯の支度が整った食卓は久しぶりに暗い雰囲気に包まれていた。


両親の離婚が決まった後は長い間のわだかまりが溶けたことで、ごく普通の家庭のように食卓を囲むことができていた。


でも今晩だけはわけが違う。


ついさっき僕が「実は病院で余命宣告されちゃって」と説明したものだから、みんな無言になっていた。


「余命宣告?」


僕の説明が終って充分過ぎるくらい時間が経過してから、父親が言った。


「うん。ガンだって」


「でも、そんなの本人に直接言ったりしないでしょう?」


母親は戸惑った様子を隠せていない。


「僕が無理矢理聞きだしたんだ。教えてくれないとここから一歩も動かないぞってさ」


冗談っぽく言って笑って見せたけれど、両親は少しも笑わなかったしこの場の空気も軽くはならなかった。


「それで、いちおう後日両親にも話をって言われた」