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「お前の余命が一か月だなんて、まだ信じられない」


歩道を歩きながら純平が言う。


純平と隆夫は、1人で家に戻ると言う僕に付き添って歩いていた。


1人でも大丈夫だと伝えたのだけれど、2人が譲らなかったのだ。


「僕だってまだ信じられないよ」


そう答えて思わず笑う。


その笑顔を見て隆夫が泣きそうな顔になってしまった。


「そんな顔しなくても、僕はまだ生きてるよ」


「わかってるよ。でも……」


隆夫はそこで言葉を切り、鼻をすすった。


「おい直樹。余命の話冗談とか嘘じゃないだろうな? 本当のことだろうな?」


不意に立ち止まった純平が僕の肩を痛いくらいに掴んで詰問する。


その表情は真剣で、でもやっぱり隆夫と同じように泣き出してしまいそうに見えた。


胸がチクリと痛むのを感じる。