覚えているのは落下していくときの心地よさ。


それに、真下にいた少女の驚愕の表情。


そうだ、あの子は大丈夫だったんだろうか?


僕が自殺に巻き込んでしまったから、きっとひとたまりもなかっただろう。


もしかしたら死んでしまったかもしれない。


そう考えてゾッとした。


僕はこうして生きているのに彼女が死んでいたらどうしよう?


そう思うと居ても立っても居られなくなり、歩調が自然と早くなっていく。


あれは夢だったのだと思っていたはずなのに、その感覚が鈍くなっていた。


少し早足で歩いただけで息が切れて体の内側が悲鳴を上げる。


それでも足を緩めることなく歩いて行くと、細いビルが右手に現れた。


灰色の外階段が見えたとき、夢で見たあの光景をありありと思い出す。


そうだ。