4時間目の授業が終るチャイムが聞こえて来た頃、保険の先生が声をかけてきた。


少し眠ったら良くなるかと思っていたけれど、結局一睡もできないままだ。


「はい……」


返事をしてもそれがとても苦し気になってしまって、先生が眉を寄せる。


「きつかったらご家族に連絡を入れて迎えにきてもらうけど?」


若くて綺麗な保険の先生の言う事にぜひ従いたいと願う。


だけど僕は左右に首を振っていた。


「いえ、大丈夫です。もう少し横になっていれば治ります」


本当に治るのかどうかは怪しかったけれど、ここで帰れば純平たちは翌日の朝家にやってくることになる。


それだけは避けたかった。


「本当に大丈夫? 顔色がひどいわよ?」


先生がぬれタオルで額の汗をぬぐってくれると冷たくて心地よかった。


心地よさに身をゆだねながら目を閉じて深呼吸を繰り返していると、だんだんと痛みが和らいでくるのを感じる。


薬だって効果がなかったのに先生ってすごいな。


そんなことを悠長に考えている間に、僕は眠りに引き込まれて行ったのだった。