あの味でここまで育ったのだから、今更忘れられるわけもない。


父親の目にも涙が滲んでいたけれど、その半面清々しい表情を浮かべていた。


この2年間ほどずーっと心の澱となっていた部分がようやく取れたのだ。


離婚という結末になっても気持ちは晴れ晴れとしている。


「これからもう少しの間、よろしくお願いします」


母親は父親へ向けて、もう1度丁寧にお辞儀をしたのだった。