「どうして、あの人だったの？」


男の人は他にも沢山いる。


僕が言うのもなんだけれど、母親は年齢よりも若々しくて可愛らしい。


その気になればもっといい人と付き合う事ができそうだった。


「直樹が受験生のとき、孤独だったの」


そう言われて心臓が跳ねた。


孤独という言葉は今の僕、いや、一番最初の人生を歩んでいた僕と同じだったから。


「直樹は毎日勉強勉強で忙しいし、お父さんはちょうど仕事が忙しいときだった」


「そういえばそうだったよね」


僕は受験の頃をぼんやりと思い出した。


家にいてもずっと勉強をしていて、あまり家族と顔を合わせていなかった。


母親がなにか話しかけて来ても、適当にあしらっていた気がする。