苦味が口いっぱいに広がって美味しいとは思えず、思わず顔をしかめてしまいそうになる。


それを見た母親がふっと頬を緩めてほほ笑んだ。


「いつからそんな苦い物を飲めるようになったの? もう充分大人なのね」


どこか悲しそうな声色だった。


「相手とは長いんだよね?」


僕は精いっぱい大人ぶって訊ねる。


ここで子供扱いをされて誤魔化されるのはまっぴらだ。


「えぇ。直樹が中学3年生のときから」


その言葉には電流を流されたような衝撃を受けた。


そこまで長いとは思っていなかった。


せいぜい1年とか、そのくらいだと考えていていたのだ。


このことを父親は気が付いているんだろうか。