ホッと胸をなで下ろすのもつかの間、ビルの屋上から飛び降りたことをおもい出した。


「僕、あの時……」


そう呟いて自分の両手を見つめる。


あの時確かにビルの屋上から飛び降りた。


体に感じた風も、目に見えた景色も全部覚えている。


でも、生きてる?


ベッドから下りてジャンプしてみたり頬をつねったりしてみるが、やっぱり自分は生きているようだ。


まさかあれが夢で、今が現実なんじゃ?


きっとそうだ。


余命宣告も自殺も現実感がなさすぎる。


僕は長い夢を見ていて、それで今目が覚めたところなんだ。


なぁんだ、そうだったのかと胸をなで下ろしてスマホ画面を確認する。


日付を見て僕はまた硬直してしまった。


「7月1日?」


日付を読み上げて眉を寄せる。