「ありがとうございました」


僕は医師が引き止めるのも無視して診察室を後にした。


廊下に出ると真奈ちゃんが壁にもたれるようにして立っていた。


まさかここにいるとは思わなくて「あっ」と小さく声を漏らす。


その声でこちらに気が付いた真奈ちゃんが近づいて来た。


「来てくれたんだ」


「うん。また自殺されたら迷惑だから」


真奈ちゃんは相変わらず冷たい一言を投げて来る。


それでも今はそれが心地よかった。


「どうしてこの病院にいるってわかったの?」


2人で歩きながら聞く。


「この辺で大きな病院なんてここしかないじゃん」


確かに、その通りだ。


僕たちはあのビルを通り過ぎて自宅へと向かう。