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僕が救急車に乗った子はこれが初めてのことだった。


それまでも腹痛に襲われることはあったけれど、ずーっと我慢してきた。


その我慢強さが仇になったみたいだ。


「今度、ご両親を連れておいで」


医師が真剣な表情でそう言った。


1度目のときもそうだった。


僕が子供だからか、それとも余命宣告の時は必ずそうしているのか知らないけれど、医師は患者である僕に直接そのことを伝える事はなかった。


「今、この場で結果を聞かせてください」


1度目のときも僕はこのセリフを言った気がする。


なにが原因なのかわかれば治療して、すぐにでもサッカー部に復帰できると思ったからだった。


医師は1度目と同じように目を丸くして、どうするべきか思案している。