「神田さんが僕を振ったのは、神田さんの幼馴染の有馬ありま楓くんがいるから?」
 えっ!
 驚いた。香澄川くんが私の幼馴染の名前と存在を知っていたなんて。
 私の体のどこかに監視カメラでもあるのだろうか。
 
 確かに、私が香澄川くんのことを振ったのは楓の存在があるから。楓は私にだけ優しくて、暇さえあれば私に抱きついてくる可愛い幼馴染。
「涼音ちゃん!」
と言ってすり寄ってくる楓に、いつからだろうか、私が楓のことを好きになっていたのは。覚えていないくらいに、私は、昔から楓のことが大好き。

そのことを香澄川くんに言ってもいいのだろうか。でも、本当のことを言ったら香澄川くんが諦めてくれる、んだよね。
 恥ずかしいけど、勇気を出さなきゃ。
 手紙を読んでいるみたいに言えば恥ずかしくない。「すう」私は深呼吸をした。
 「香澄川くん、私が、香澄川くんを振ったのは楓がいるからです。それだけでいいですか?」
 さっき、香澄川くんを振ったとき以上に緊張した。
 「胸の奥から込み上げてくる恥ずかしさがオーバーヒートして吐きそう」と思っているとまた、香澄川くんが言った。
 「有馬くんとはどういう関係か、詳しく、教えて。」
 “詳しく”のところを強調して言われたなと思うのと同時に、香澄川くんのわりに食いついてくるなと思った。
 「えーとっ。どこまで聞きたい?」
 本当は聞かれたくないけど。しょうがない。さっきも言ったけど香澄川くんの告白を無下にした私に答えない権利なんてないんだ。