キーンコーンカーンコーン
 あっという間に50分が経っていたらしい。いろいろなことがあったな。
 そんなこと考えないで、楓をお弁当に誘わないと、他の人に取られちゃう。それだけは御免だ。
 「かえっ!」
 楓に声をかけようと思ったら、他のクラスの女の子が楓に声をかけているのが目に入った。さらさらの髪で低めのツインテールをしている。プリーツスカートは明らかに校則に引っかかるくらい短くしていて、ブラウスの上に薄いピンク色のカーディガンを羽織っている。あっ、そういえば3月に借りた楓のカーディガン、返してなかったな。楓にカーディガンをかけてもらって安心しちゃって、今に至る。
 柚から聞いた。あの子は、岩槻陽菜(いわつきひな)、というらしい。名前まで可愛いなんて。神様、陽菜さんに二物を与えすぎだよ。世の中ふこーへいだ。
 だんだん嫉妬心がメラメラと、湧き上がってきて。
 「12本のバラの花束、海を泳いでるクラゲ・・・」
 「なんでそんなこと言ってんの?」
 「たぶん、ふつふつと湧き上がって来てる黒い気持ちを静めようと綺麗なものを想像してるんだと思う。」
 そうだよ、嫉妬でどうにかなりそうなんだよ。よく理解してくれた。華也(かや)ちゃん。心の友よ~。華也ちゃんはいつも冷静で、体育会系ではないけど元気ハツラツ系の柚がかっかしたときに(なだ)める係だ。華也ちゃんと私は派手なものは好きではないので柚と同じように馬が合う。ふわふわした性格でちょっと力を込めただけで潰れてしまいそうで、壊れ物を扱うように関わらないといけない。決してつまらないというわけではない。
 あぁ、なんか気持ち悪くなって来た。なんか地に足がついている感覚がしない。視界が狭まってきているような気がする。あれ、なんかみんなと地面が傾いている。あっ、違う。私が傾いてるんだ。そう思った瞬間・・・
 バタンッ
 大きな音を立てて私は倒れた。
 痛っ、ここで私は意識を手放した。