キーンコーンカーンコーン
授業の始まりを告げるチャイムが鳴った。4限目は数学。数学は得意な方だ。去年の学年末テストでは90点だった。
 もうすぐお昼だ。今日は楓を誘って外でお弁当を食べようかな、そんなことを考えながら授業を受けていると
「神田さん、この問題の答えは?」
 ゆうみんに指されてしまった。今は微分積分を学習している。高1の数学の中で1番苦手。昨日、予習しようと思ったのだが、英語の予習もして疲れてしまったため、明日早起きしてやればいいかと思い寝てしまったのだった。案の定、寝坊してしまい、数学の予習はできなかった。つまり、言いたいのは、「この答えが全く分からない」ということだ。でも、ここで、わかりません、と言ってしまったら、課題がみんなより多く出されるに違いない。どうしよう。ゆうみんは、早く答えろよ、と言いたそうな顔をしているし、外にいる小鳥は「ピッ、ピッ」と私の解答を急かすように鳴いている。そんなとき、私の机に紙飛行機が飛んできた。紙を開いてみると
 
 涼音ちゃん
 その答えは —だよ。
 かえで

 ナイス、楓と叫びたくなるくらい今日1で嬉しいことだった。
 「—です。」
 「応用問題なのによくできたね。」
 しかも、褒められた!嬉しい!、と思ったのも束の間。
 「早乙女くん、きみやっぱり頭いいね~。先生たちの間でも有名だよ。いや、成績トップというだけある。今度から“天才くん”と呼ばせてもらうよ。」
 ガ、ガーン。褒められたのは楓だった。そりゃそうか、私は楓が教えてくれた答えを読んだだけだもんね。と、私は1人勝手に納得していた。
 他のみんなもドン引きしている。ゆうみんが楓のことをベタ褒めしすぎて。
楓が超人級に頭がいいことは放送委員会の人を除いて全員知っている情報だけど、ゆうみんが人にこんなに褒めるという情報は新情報。ある意味いいことがあったな。“みんなの掲示板”に書いておこう。
 楓は、こんなに褒めるのは嬉しいけどちょっとやめて欲しい、と私に囁いてきた。当事者がこのテンポについていけてないってどういうこと!?