4月になって、太陽はきらきらと輝いていて、私たちを容赦なく照り付ける。
 「ひゃー。こりゃ今日だけでも一生分の日焼けしそうだよ。」
 柚はそう言って休み時間になるたびにこれでもかというくらいに日焼け止めを塗っている。4月なので私はまだ半袖のブラウスではなく長袖のブラウスとその上からグレーのカーディガンを羽織っている。校則に引っかからないくらいに折ったプリーツスカートの下には黒いレギンスを穿いているので、日焼け止めは塗らなくても、あまり日焼けするような恰好はしていない。柚は、その油断がいけないんだよ、とお説教するが私は興味がないので聞き流している。
 私は昔からティーン向け雑誌など、1回も目を通したことがない。そのせいでお洒落に疎くなってしまった。2個上の姉、早希(さき)は、校則に引っかからない程度に制服を着こなして、ティーン向け雑誌を読みまくっている。
 早希は髪にもこだわっているよう。私は500円くらいで買えるようなシャンプーをしているが、早希は900円もするものを使っている。そのお金はどこからでているのかというとバイト。
 ショッピングモールの“White sweet”という名の甘いスイーツを売っているお店で働いている。何回か柚と行ったことがある。フルーツパンケーキが絶品で。中間テストや期末テストが終わった後に、ご褒美、と言って柚と2人でWhite sweetに行って各々好きなスポーツを食べている。
 私と柚は筝曲部で活動は土曜日。平日にバイトをすることは可能だが、先輩後輩関係が嫌でバイトをする気はない。バイトをすれば今後の就活にも役立つのだろうけど。柚もバイトをする気はないようだ。
 実は柚は泉グループの社長令嬢。将来は社長になることが決まっている。1回だけ柚の家に行ったことがある。部屋や食べ物が平凡な私たちとは全く違った。でも鈴の食事だけは私たちと同じだった。理由を聞くと、みんなと同じようなものを食べて、同じようなことをしたい。世間知らずの高嶺のお嬢様だとは思われたくない、だそうだ。確かにこの学校で柚が泉グループの社長令嬢だと知っている人は私と先生のみ。小学校、中学校の同級生にも行っていなかったようだ。バイトも普通のことだと思うけどな。柚の親御さんはバイトも経験だと言っているのだが柚は聞く耳を持たない。