バタンッ!

 大きな音を立てて私は派手に転んでしまった。
 いてて・・・
 と思う間もなく、未来ちゃんが追いかけてくる。未来ちゃんは自分で「廊下は走るな」と言っているのに今日に限って全速力で追いかけてきて、
 「隙在り!」
 そう言って、私の上に馬乗りになった。
 「生徒にする行動じゃないでしょ!」と言いたくなるほどただただ重い。未来ちゃんにそんなこと言ってしまったら、ゆうみんのところに伝達がいって内心点が下がってしまう。ただでさえ中間テストの順位も点数も平均で中途半端なのに悪口をいったら“中”が“中の下”になる。「そんなことは嫌」と思うことで未来ちゃんに対する悪口がなんとか抑えられた。
 「痛い、痛い」
 私は悲痛な叫び声をあげた。
 「起こしてよ。馬乗りになるのはもうやめてよ。」
 「いやいや、自分の悪事を反省するまではこのままだよ~」
 未来ちゃんはニヤリと笑った。この笑顔は何かを企んでいる顔だ。そう確信できる。その企みが実行される前に謝罪の言葉を述べなくては。焦り始めて冷や汗が止まらない。今日は厄日だな。断ったり、謝ったりしなきゃいけないんだもん。
 「本当にごめんなさい!もう死ぬまでこんな廊下を走るなんて幼稚なはしたないことはしません。」
 私は深々と頭を下げた。「うーん。どうしようかな」このままでは許してもらえないと思った私は、本当に反省しているという意味を込めて土下座した。
 「よし、そこまでするなら許してあげようじゃないか」
 よかったぁ。
 私はこの日“土下座”という行為がとても役立つことを知った。
 「ほら、顔上げな?神田さんの幼馴染くんが、ずっと、吹き出しそうになるのを我慢してるから。早乙女くん、だっけ?」
 「はいそうです。何かありました?」
 「そろそろ吹き出してもいいんじゃない?逆に神田さんがかわいそうだよ。」
 未来ちゃん、本当に神!本当に!私が恥ずかしくてたまらないことに気付いてくれたんだね。もとと言えば未来ちゃんが原因だけど、救ってくれたならいいか。終わり良けば全てよしとしよう。