「無理だろ。これ以上の進展は。なんせ鈍感な上に奥手な、あの兄貴だぞ」
「だよね、私もそれとなーく告ろうとしたら玉砕したの。詰んだ。助けて」
「仕方ねぇな、協力してやるよ」
「ありがと~! あんたはほんといいやつだよ、(ユウ)~! で、具体的になにをすれば?」
「そうだな……あー、アレとかどうだ。おまえんとこの家系の、意味不明な体質」
「あ、なんか衝撃受けたりとかすると、コロコロ性別変わっちゃうやつ? 叔母さんもとい叔父さんから話聞いて、うそすぎでしょって失神しかけたんだよね、昨日」
「そこで失神しない図太さが取り柄のおまえだけど、どうにかこのセンシティブな問題を踏み台にしてみせろ。しおらしくしてりゃ、流石にあの鈍感大魔神にも響くだろ」
「な~る」
「距離を詰めたら俺が引っかき回してやる。女優になれ」
「がってん!」


「優~! おでこ大丈夫? こないだはごめんね、はりきってちょっと派手に転びすぎちゃった!」
「痛いのはお互いさまだろ。てか、タイミング的には最高だったし、結果オーライじゃね」
「そう! ほんといいときに(シュウ)さん来てくれて! 優発案『ドキドキ性転換事件からのハラハラやきもち大作戦』、大成功だね! 演技も最高だった! ありがとう、優!」
「別に、俺もやりたくてやってたし。まぁ……失敗して、俺が慰めてやってもよかったんだけど、な」


「大好きな子がいるんです。幼馴染の女の子」
「あの日、ほんとはすごく焦ってたんです。顔を見るまで、生きた心地がしなかった。それで、僕を頼りにしてくれて、嬉しくなりました。現金ですよね」
「でも、僕たちはひと回りも年が離れてるし、うちの優くんと仲がいいから、見守ろうって、そう思ったんです」
「だけどやっぱり、ダメでした。ふたりが密着してるのを見たら、カッとなっちゃって……はは、うまいこと、してやられましたね」
「やっと、わかりましたから。だから僕は、もう、間違えません」
「もう、自分の気持ちに、うそはつきません」

 ──私たちは、うそをつきました。
 そうして、かけがえのないものを得ました。

(もも)ちゃん」
「なんですか? 秀さん」
「大好きです。(はじめ)くんも。きみのことは、全部好き」
「ひぇ……勘弁してください……」
「照れてるの? かわいいな」
「秀さんのいじわる!」
「あはは」

 ──以上、証明終了。