「無理だろ」

 幼馴染にフラれた。
 親の顔より見た、大好きな人だった。
 テンパった自分がなにを口走ったのかは覚えてないけど、「好きです」って最低限のことは伝えたつもり。なのにだよ。

「ばーかばーか! ぶぁーか!!」

 十数年も一緒にいて、好きなのは私だけだったって? うわぁ痛い勘違い女。恥ず。なんだよ期待させやがって。

「あんたなんかなぁ、一生彼女もできずに独り寂しく天寿を全うすりゃいいんだぁあああ!!!」

 歩道橋の欄干を引っつかみ、吠える。
 甲高いこだまは、目下で行き交う自動車のエンジン音にかき消される。
 唯一の目撃者であるカラスさえも、闇に溶け込んで、嗤うことすらしない。

「いいもん……おうちかえって、ねるもん……」

 べしょべしょの顔はほったらかす。かまうもんか。帰っても、誰もいないんだし。
 これはどうせ、少女漫画のストーリーにもならないような、ありきたりな失恋のお話。だったのに。

「……ふぁっ?」

 踏み出した次の瞬間、揺らぐ視界、謎の浮遊感。
 なにが起きたかわからない私が、最後に目にしたもの、それは。
 薄汚れたコンクリート階段の、踊り場だった。