最悪だ……。
こんな憂鬱な高校生のスタートを切るのは俺、城崎純也くらいだと思う。
「はぁ……」
十歩歩けば一回はため息が出る。学校へ行くのがめんどくさい。
学校へ少しづつ近付くにつれて、気持ちが重くなる。
「バスケ部入りませんかー!」
校門に近づくにつれて部活勧誘の声が聞こえてくる。
校内に入るにはこの勧誘の洗礼を通過しないといけない。純也も例にもれずもみくしゃにされる。
「あっ、君! 城崎くんじゃない? 香里ケ丘中学バスケ部の!」
「え、まあ、はい」
曖昧に返事する純也。すると先輩と思われる大男から握手される。
「おお! 君が入部してくれると助かる! この高校もうちのバスケ部に入部するためだろう? 歓迎するよ!」
元気な先輩は満面の笑みで純也の肩を叩く。しかし、純也は相手が例のことを知らないようだったので説明することにする。
「すいません。俺、引退してから事故に会っちゃって……もう激しい運動はできないんです……」
「なに? そうなのか?」
先輩の顔から笑みが消え、曇った顔になる。
「そうだったのか……残念だよ。君がいれば高校でも全国を狙えたというのに」
「すみません……」
申し訳ない気持ちでいっぱいになった純也は、そそくさとその場を離れる。
(やっぱり動けない俺に価値なんてないのかな……)
そんなことを考えながら、目立たないように勧誘をすり抜けてさっさと教室を目指すことにする。
死んだ魚の目をしながら歩いていると、一人の女子高生に声をかけられる。
「ねえ、世界を目指さない?」
「えっ?」
突然声をかけられ、部活の勧誘かと思いきや飛び出てきた言葉は『世界を目指さないか』ときた。
「あ、自己紹介しとくね。私、中条舞華。二年生でとある部活の部長をしています!」
ハキハキと話すこの上級生は、真っ直ぐ純也の目を射抜いていた。
純也はポカンとしていると、舞華は純也の顔の前で手をひらひらと振った。
「おーい。君に言ってるんだけど?」
純也はハッと我に返り、おずおずと挨拶を返す。
「あ、え、えーっと、俺、城崎純也……です……」
「純也くんかー。よろしくね!」
舞華はぱあっと明るく笑うが、対照的に純也の顔は暗かった。
「すいません。俺、部活には入る気ないんで……」
純也は申し訳なさそうに頭を下げる。しかし、舞華は知ってたと言わんばかりに淡々と述べていく。
「城崎純也。|香里ケ丘中学バスケ部のエース。圧倒的な実力で全国に導いたまさに英雄、でしょ?」
純也は驚いていた。まさか自分が高校生に知られるほど有名になってるとは思ってなかったからだ。しかし、だったら余計に期待をさせてはいけないと思い、純也は口を挟む。
「知ってるならもう一つ、情報を足しといてください。俺、事故っちゃって運動できないんすよ。だから――」
部活には入れない、と言おうとしたところで彼女の人差し指で口を封じられた。
「それも知ってる。そんな純也くんだからこそ我が部に入ってほしいんだよ」
純也は女性の指が唇に触れたことに照れながらも、ムッとした態度で彼女の手を払った。
「知ってるならわかるでしょ。俺は運動できないって。それとも文化部のお誘いですか? 悪いんですが、文化部にも入る気ないっすよ」
純也の機嫌が悪くなったのを見て、舞華は両手をこすりつけて謝る。
「ごめんごめん。からかうつもりはないんだよ。それに入ってほしいのは紛れもなく運動部。それも種目はバスケだよ」
純也は舞華が何を言っているのかわからないという感じで、頭の上に『?』を浮かばせていた。
「あっ、もしかしてバスケ部のマネージャーとかの勧誘ですか?」
「ん? あー、それも違うんだよなあ」
煮え切らない様子の舞華にイライラが募っていく純也。そこで舞華は、ようやく宣言する。
「いいでしょう! そこまで気になるなら仕方ない! 我が部の正体を教えましょう!」
いつの間にか、純也が部活に興味があるような感じで話をされるが純也は気にならなかった。というより本当に何の部活の勧誘なのかということに興味が沸いていた。
「我が部の名前、それは――ゆるスポ部よ!」
純也の周りが静寂に包まれたような気がした。
「……は? え、ゆる……なんて言いました?」
何部か宣言されたにも関わらず、純也は理解できなかった。そんな純也の様子を見て、舞華はニヤッと口角をあげもう一度説明する。
「ゆるスポーツ部、略してゆるスポ部だよ」
この出会いから、純也の止まっていた時間は動き出していたのかもしれない。
これが元天才バスケ少年と謎の上級生による、出会いだった。
こんな憂鬱な高校生のスタートを切るのは俺、城崎純也くらいだと思う。
「はぁ……」
十歩歩けば一回はため息が出る。学校へ行くのがめんどくさい。
学校へ少しづつ近付くにつれて、気持ちが重くなる。
「バスケ部入りませんかー!」
校門に近づくにつれて部活勧誘の声が聞こえてくる。
校内に入るにはこの勧誘の洗礼を通過しないといけない。純也も例にもれずもみくしゃにされる。
「あっ、君! 城崎くんじゃない? 香里ケ丘中学バスケ部の!」
「え、まあ、はい」
曖昧に返事する純也。すると先輩と思われる大男から握手される。
「おお! 君が入部してくれると助かる! この高校もうちのバスケ部に入部するためだろう? 歓迎するよ!」
元気な先輩は満面の笑みで純也の肩を叩く。しかし、純也は相手が例のことを知らないようだったので説明することにする。
「すいません。俺、引退してから事故に会っちゃって……もう激しい運動はできないんです……」
「なに? そうなのか?」
先輩の顔から笑みが消え、曇った顔になる。
「そうだったのか……残念だよ。君がいれば高校でも全国を狙えたというのに」
「すみません……」
申し訳ない気持ちでいっぱいになった純也は、そそくさとその場を離れる。
(やっぱり動けない俺に価値なんてないのかな……)
そんなことを考えながら、目立たないように勧誘をすり抜けてさっさと教室を目指すことにする。
死んだ魚の目をしながら歩いていると、一人の女子高生に声をかけられる。
「ねえ、世界を目指さない?」
「えっ?」
突然声をかけられ、部活の勧誘かと思いきや飛び出てきた言葉は『世界を目指さないか』ときた。
「あ、自己紹介しとくね。私、中条舞華。二年生でとある部活の部長をしています!」
ハキハキと話すこの上級生は、真っ直ぐ純也の目を射抜いていた。
純也はポカンとしていると、舞華は純也の顔の前で手をひらひらと振った。
「おーい。君に言ってるんだけど?」
純也はハッと我に返り、おずおずと挨拶を返す。
「あ、え、えーっと、俺、城崎純也……です……」
「純也くんかー。よろしくね!」
舞華はぱあっと明るく笑うが、対照的に純也の顔は暗かった。
「すいません。俺、部活には入る気ないんで……」
純也は申し訳なさそうに頭を下げる。しかし、舞華は知ってたと言わんばかりに淡々と述べていく。
「城崎純也。|香里ケ丘中学バスケ部のエース。圧倒的な実力で全国に導いたまさに英雄、でしょ?」
純也は驚いていた。まさか自分が高校生に知られるほど有名になってるとは思ってなかったからだ。しかし、だったら余計に期待をさせてはいけないと思い、純也は口を挟む。
「知ってるならもう一つ、情報を足しといてください。俺、事故っちゃって運動できないんすよ。だから――」
部活には入れない、と言おうとしたところで彼女の人差し指で口を封じられた。
「それも知ってる。そんな純也くんだからこそ我が部に入ってほしいんだよ」
純也は女性の指が唇に触れたことに照れながらも、ムッとした態度で彼女の手を払った。
「知ってるならわかるでしょ。俺は運動できないって。それとも文化部のお誘いですか? 悪いんですが、文化部にも入る気ないっすよ」
純也の機嫌が悪くなったのを見て、舞華は両手をこすりつけて謝る。
「ごめんごめん。からかうつもりはないんだよ。それに入ってほしいのは紛れもなく運動部。それも種目はバスケだよ」
純也は舞華が何を言っているのかわからないという感じで、頭の上に『?』を浮かばせていた。
「あっ、もしかしてバスケ部のマネージャーとかの勧誘ですか?」
「ん? あー、それも違うんだよなあ」
煮え切らない様子の舞華にイライラが募っていく純也。そこで舞華は、ようやく宣言する。
「いいでしょう! そこまで気になるなら仕方ない! 我が部の正体を教えましょう!」
いつの間にか、純也が部活に興味があるような感じで話をされるが純也は気にならなかった。というより本当に何の部活の勧誘なのかということに興味が沸いていた。
「我が部の名前、それは――ゆるスポ部よ!」
純也の周りが静寂に包まれたような気がした。
「……は? え、ゆる……なんて言いました?」
何部か宣言されたにも関わらず、純也は理解できなかった。そんな純也の様子を見て、舞華はニヤッと口角をあげもう一度説明する。
「ゆるスポーツ部、略してゆるスポ部だよ」
この出会いから、純也の止まっていた時間は動き出していたのかもしれない。
これが元天才バスケ少年と謎の上級生による、出会いだった。