新藤 陽夏

「おはよー、朝よ」
お母さんの声で目が覚めた。

私の母は、朝ごはんが机に並べた状態で私を起こしに来る。起きるまで何度も起こしてくれる。そのため寝坊したことも朝ごはんを抜いたこともない。
夕飯は私が仕事から帰ってきて、手洗いなどを済ませているうちに机に並べてくれている。
さらに身の回りの事は大抵手伝ってくれるし、
家事もぜんぶ母が行う。
ひどい雨の日は送り迎えまでしてくれる。
友達にいいお母さんだね。いいなぁ。と羨ましがられることも多かった。

…でもそれは見た目だけ。

母は良い母親を演じているのだ。
だから、誰も私が虐待されているなんて思いもしない。
母は私のことを嫌っている。
小さい頃から病気がちな私をめんどくさいと思っている。馬鹿で不器用なのに努力を続けることも苦手な私を情けない娘だって思っている。

無視も悪口を言われるのもいつものこと。
3つ下妹である彩華は頭が良く努力家で、とってもいい子で。そんな妹と比べて私は劣っている。
自分でも分かっている。仕方ないことだ。
だけどそんな家に嫌気がさして高校卒業後、
進学せず就職して一人暮らしをする道を選んだ…