それからの毎日は日向と紬は連日のように居残りをしている。日向の方は部活と上手にやりくりしていた
私は遅く帰るのは少し身の危険を感じ、紬には適当に理由をつけて先に帰っていた

そんな日々が続いていると初夏からセミの声が聞こえる夏がやってきた

「ほんとあっちぃなー」
放課後、私と日向が2人きりとなっている。夏休みの前にやってきた期末テスト

「私はなんで日向のテスト係になってんの?」
勉強して帰ると連絡を入れれば、両親はなんも言わない

「ん?教えんの上手いからに決まってんじゃん」とキョトンとしていた

そんな日向を放っておいて前と変わらずテスト範囲と要点を伝える。すると理解しスラスラと問題を解いていた

そんな日向の姿を独り占めしている私は少し優越感に浸っていた

「ほんと頭いいよね日向」
私は一言、何も考えずに伝えた

「俺を褒めるなんてなんかあった?」
問題を解く手を止めない日向はそう返答した

「私をなんだと思ってんの?」
私はまたなにも考えずにこたえる

「君、夏休み、祭り行く予定ある?」

ぶわっと窓から夏風が入ってきてカーテンが揺れる。セミの声が煩わしかったのに今は何も聞こえない

日向はまっすぐ私を見つめた

「紬と…紬と浴衣着ていこうねって…」
なにも約束していない適当な嘘をついた
私は先程からなにも考えていない、日向に目を奪われて思考停止しているのだ

「“紺月”はそんな話してなかったけど…?」
嘘を見透かす綺麗な二重の瞳で私を見つめる日向

「あはは…とっさに嘘ついちゃった…」
その目を見れば見るほど吸い込まれて、顔が熱くなるのを感じて目を逸らして、やっと私の本調子を戻してくる

「俺に嘘は通用しないからやめとけ。それと夏祭りのこと忘れて」
また日向はスラスラ問題を解きはじめる

「なんで?日向こそ予定ないの?」
私は慌てて返した…だってこんなチャンスないもの

「ん?ないけどできる予定だよ…いいこと聞けた」とお得意のスマイルをみせた

日向がこの笑顔をする時はもう何も言わせないようにするためだ