少し紬の涙がおさまって、顔を上げた

「ごめん、私より辛いはずなのにこんなに泣いてさ」

紬は照れたように笑った

「ううん、私のために流してくれた涙は嬉しかったしいいの。ありがとうね」

私は首を振った

紬はブランコから降りて私と向かい合わせになるかのように立って、柵に少しお尻を載せている

「日向はそれを知って毎日顔を見に来てくれたの」

紬はうんうんと頷いてくれる

「最初はもう来ないでって言うつもりだったのに…日向はさ、紬みたいに私のココに土足で真っ直ぐぶつかってくるの」

私は胸に指を指した

紬はえ、なにそれって笑っていた

「おかげ様で私の負け。それから来てくれるようなって…紬にしっかり言わなかったのは」

私は少し言うのに躊躇った
身勝手な私を許して

「私と関係をやり直しさせるため。土台を作ってくれたの」

紬は真面目な顔で聞いてくれる

「だから何も日向は悪くないの…ここまで私がしっかり向き合うことから逃げたせいなの」

私は少し下を俯いた

「遠くに感じるって言ってたけど紬と日向が似てるのは、日向が紬にそう感化されたからで…私は近くなったと思うけどね」

私は少し誤魔化すかのように早口で笑う仮面をつけた

「それで、○○はどうしたいと思ってここに来たの?」

紬は真面目な顔で優しく聞いてくれる

私は正直に何も包み隠さず言う

「私はやり直したくてここにいる、身勝手なこと分かってるの。でも…」

私の言葉を待たずに紬はガバッと抱きしめてくれる

「だったらそれでいいじゃん。理由なんていらないし、謝る必要もない」

紬の抱きしめる力は強くなる
まるでもう離さないとでもいうように

「だって私達、友達だもん」

紬は嬉しそうに笑っているのが伝わるぐらい抱きしめ温度が心地よくて

抱きしめる力が私のことを思ってくれているから

そう感じて思うと私は嬉しい

「また私と…また…と…友達でいいの?」

私は抱きしめ返せずにいたし言葉が詰まってしまっていた

こんなにも紬を困らせている人間が友達をしてて迷惑じゃないだろうか

きっと私が居なくなった時、友達を失った悲しさが広がる

そんなことを思ってしまって
紬の悲しい顔が私の目に浮かぶ

その時に紬が流す涙を私はすくってあげられない

「泣かないで」という言葉もかけられない

優しく頭を撫でることさえできない

私きっと上からその姿を見ているだけ

やはり紬のことを突き放そうとした私の頭の中には日向の「一緒に傷ついてやる」という言葉が響いた

私はなんのためにここにきたの

大切な人に大切だ、大好きだって素直になるためじゃなかったの

大丈夫、私の思いを伝えられる

だってもう1人じゃないから

ありがとう、日向

私はしっかり紬と向き合えているよ。

そうすると紬は抱きしめるのやめて、私の頬を両手で挟む

冬だといえども、ブランコを全力で漕いでいた紬にとって、手は冷えの対象外だろう

「月、私が友達になってあげる」

そう紬はあの頃のように笑った

私きっとびっくりした顔を紬に見せた

そして私は約束の日のことをフラッシュバックする

私達にとって大事なあの日
私が閉じ込めていた思い出が一気に溢れ出す

忘れてはいけない記憶

私と紬はここからはじまった