あれから日向は紬の話もしながら、毎日のように顔を見に来る

私が紬に会うことはふれてこない

きっと見守ってくれているのだろうと日向の優しさが感じる

そして寒さがより一層、厳しくなった日

私は少しの外泊許可が出た

つまりはもう…そういうことだと思う

妙に冷静な私と裏腹にその事を日向に伝えると私より喜んでいたっけな

そんな姿を思い出しては自然に笑みが零れる

悪い未来なんてその時に考えればすむ話

今は楽しもう

せっかくの病院の外なんだもの

「月、もうすぐ家に着くわよ」

母のそんな柔らかい声が車内に響く

私は家に帰ってきたのだ
部屋までゆっくりと行った

ずっと病室のベットで過ごしていたから環境の変化などで疲れが出てまたベットの上へ

でも自分のベットと病室のベットとは違う

自分は普通の女子高生だと安堵できる

そして私の携帯が鳴る

ディスプレイには日向の文字

『あ、もしもし家着いた?』

日向の昨日と変わらない声に少し疲れが飛ぶ

『うん、ついたよ。今、部屋のベットの上だよ』

『そっか。慣れないことは身体に負担だな。今日はゆっくりするんだぞ?そういや、明日学校来るつもりだろ』

日向の呆れた声が聞こえる

きっと私の身体の負担を考えれば学校は行かずに安静にしているほうがいいだろう

でもせっかく帰ってきたのだから、したいことをするの

そう決めた

『うーん、最後の日に行くつもり。さすがに身体を慣らしたいかなって』

私は行きたい気持ちを堪えてそう言うと

『はぁ…良かった。全力で俺、止めようかと思ってた』

安堵のため息が日向から聞こえた

私はそんな姿が安易に想像が出来てクスクス笑った

ありがとうと伝えて電話を終えた

私はずっと返してこなかったメッセージを開けた

なんて書いたのならば伝わるか

そもそも会ってくれるのか

そんな不安が渦を巻いた

「そんなこと言ってらんないよね」

私の独り言は不安を少し消してくれる

行動をしなければ変われない

日向の全力でぶつかってきてくれたから私は初めて本音の言葉を言えた

『会いたいから明日の放課後、約束した公園で』

そう打って送った

見返せばなんて身勝手な女

こんな私に…紬は________

携帯が震える

紬からのメッセージの返信だった

強く握りしめて目をギュッと閉じた

怖くて見れない

もう愛想をつかしたって書かれていたら

日向は私が気にしないように嘘をついていたら

________「私が友達になってあげる」

私の頭の中にあの頃の声がこだました

もう逃げないって決めたんだ

私は意を決して確認した

『わかった。まってるね』

そう紬らしい返事

私の知ってる紬
ずっとずっと変わらない

私だけが手に入れたくなって、変わってしまったのかもしれない

知っているはずなのにどこかに消えそうな紬が明日、来てくれるのだろうかという不安だけがまた増えて、消えてを繰り返していた